チューリップの花束に愛を込めて
そう、これでいい。
健太、だから、そんな顔をしなくていいんだよ?
『もー、二人は彼氏彼女なんだから、さっさとそうしますって言ってよね?』
あたしは健太の腕を小突く。
でも、健太はなんともいえない顔をしているだけで、ウンともスンとも言わない。
『じゃ…由奈ちゃん、健太のこと、よろしくね!』
あたしはそう言って、二人に背を向ける。
二人から、“そうする”とも“そうします”とも言われてない。
でも、二人は付き合ってるんだから、きっと明日からそうなる。
あたしが、そうさせた。
だって、もう健太の幸せな姿、見たくないよ。
それに、健太があたしのことまで考えてくれて、そんな風に辛そうな顔を見せるくらいなら。
あたしは、健太から離れる。
“幸せになりなよ”
そう言えば、もっとかっこよかったかも…
でも、あれが、あたしの精一杯…
でも、我ながら、よく涙を我慢したよ。
我ながら、よく笑ったよ…
本当に、本当に…頑張ったよ。
あたし…頑張ったよね…?
ちゃんと、いつか、健太の幼馴染に戻って、それできちんと言葉にして、“良かったね、おめでとう、幸せになってね”、そう言うから。
だから、今は、
今だけは、あたし、泣いてもいいよね…?
誰にも見られない涙なら、健太のことを想って、泣いてもいいよね…?
健太………
健太のこと、あたし、大好きだよ…
健太…