チューリップの花束に愛を込めて



あたしが彼に恋をしたのは、あたしたちが小学校3年生の時。


小学校3年生の時、右も左も分からない、この街にあたし達家族は引っ越してきた。

お父さんの仕事の都合で、こっちに来たのはいいけれど、学年の途中での転校だったから、あたしは新しい学校での生活が不安で不安で仕方なかった。


新しい学校。
新しい教室。
新しいクラスメート。
新しい担任の先生。


全部が新しくて、不安だったあたしに、隣の家に住んでいた健太が気にかけて色々と話しかけてくれたのがキッカケだった。

クラスでも男女問わず人気のあった健太と一緒にいることで、すぐにクラスメートとも打ち明けることができて、学校生活にも早く馴染めた。

それだけでも健太はあたしのヒーローだった。


きっと、健太のことは特別な男の子だと、そう思ってたと思う。



でも、そんなあるとき、クラスの園芸活動の一環として、チューリップの花の球根を植えることになって、みんなで一つずつ土に植えたことがあった。


ふと、隣の健太に、


『あたし、チューリップ大好きなんだ』

そう言ったことがあった。



そして小四の春を迎えた頃、みんなで植えたチューリップの花が咲き始めて、あたしの誕生日の日に、健太が植えてキレイに咲いた、黄色のチューリップをプレゼントしてくれた。



『俺の黄色だったよ、亜季、チューリップが好きって言ってたでしょ?』



そう言って、自分のチューリップをくれたとき、

あの屈託のない笑顔をみたとき、

あたしの胸が大きく高鳴って、そしてあたしの恋は加速したんだ。




あれから、健太は変わらず毎年、あたしに黄色のチューリップをくれる。



あたしの大好きな、大好きな、黄色のチューリップを。


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