チューリップの花束に愛を込めて
どのチューリップを見ても
放課後、あたしは一人、保健室に向かう。
休み時間の度に、健太が気になって、教室に行くもいなくて。
さっき、勇気を出してクラスの人に聞いたら、保健室に行ったきり、そう言われて、あたしは保健室に向かってる最中。
本当はあたしが行くのではなく、由奈ちゃんの方がいいのかもしれない。
でも、由奈ちゃんとはそういう話が出てるし、きっと二人は朝みたく言い合いになるかもしれないし…
それに、何よりもあたし自身が健太のことが心配だし…
そんなことを考えてるうちに、保健室にたどり着き、そしてドアを開く。
いつもの席に養護の先生は居なく、あたしはそのまま入室する。
二つベッドがある中で、右端のベッドには周りにカーテンで遮られており、健太はこっちかなと、カーテンを少し開いてみる。
『…健太…』
すやすやと眠っている健太。
ほんの少し前までは、あたしが独占していた、この健太の寝顔。
懐かしくて、そして可愛くて。
あたしは寝顔だけでドキドキしていた。
『…健太?』
あたしは健太にそっと声をかける。
健太が寝起きが悪いのも知ってる、それにこんな小声で呼んで起きる奴でもない、それも分かってる。
案の定、返事はなく、あたしはホッとした。
健太が寝入ってることを確認し、あたしはそっと手を伸ばし、健太の頬に触れた。
『…健太、あんた本当にバカだよね…
なんで、ずっと好きだった子に別れようとか言うのさ…?』
本当にバカだよ、この人は。
『…ん……亜季………』
一瞬、健太が起きたのかと思ってドキッとした。
健太の頬に触れていた手も急いでどかす。
でも、あたしの動揺とは逆に健太はまだ寝ている様子…。
『…もー…ビックリさせないでよ』
あたしはそう言って、健太にデコピンを喰らわす。
その痛みに健太は渋々という顔をしながら、目を覚ました。