チューリップの花束に愛を込めて
君が一番に好き side健太




“亜季”


俺の幼馴染の名前。


俺の幼馴染は悲しいときや辛いときに、自分の感情を押し殺して笑う子。



初めて亜季と出会ったのは、小三のとき、亜季が俺の小学校に転校してきたとき。


自己紹介を終えて、亜季が俺の隣の席に歩いてきて、隣の席の椅子に腰掛けたとき、至近距離から亜季を見た。


亜季はニコニコと笑っていて、きっと転校って、新しいところに来るのってもっと緊張して、なんていうか、もっと不安な顔をしているのかと思ってた。


だから俺の予想に反して、ニコニコと微笑む亜季が印象的だったのかもしれない。




その日、亜季とは帰る方向が一緒で、でも何も話せなくて、家に着いて初めて知ったんだ。

亜季が隣の家に越してきた家族の一員だったことに。


亜季の家には、亜季のお母さんが世話を焼いてる花がたくさんあって、亜季はその花たちを見てニコニコと微笑んだ。


俺は玄関のドアまで開けたというのに、なんだか亜季が気になって、ずっとその場所から亜季を見ていた。



『今日、新しい学校に行ったよ。
 初めて知るクラスメートの顔が怖くて…明日から不安だな…』


亜季は一人寂しく、そう花たちに話しかけていた。



その姿を見たとき、その言葉を聞いたとき。


“この子はきっとそういう時に笑う子なんだ”、そう思ったんだ。



同じ学校、同じクラス、隣の席、家は隣同士、そこまでくると、お互いの母親同士が仲良くなるのが早くて、俺たちはあっという間に家族ぐるみの付き合いになった。


亜季はいつも笑っていて、でもそのうち、家族といるときと学校にいるときの笑い方の違いになんとなく気付いて、俺はどうにか学校でも、亜季に心から笑って欲しい、そう思って。



でも、俺に何かできることは見つからなくて。




そんなある日、クラスの園芸活動の一環として、チューリップの球根を土に植える作業をした。


亜季は毎日チューリップの様子を見て、水をやり、花に話しかけていた。


ふと俺がそんな亜季の元に行った時があって、亜季はニッコリしながら、


『あたし、チューリップ好きなんだ』

そう言った。


亜季は花言葉とかも色々知っていて、クラスの中で園芸が好きという女のグループと話が合えば…俺はそう思った。


俺でも、亜季が学校でニコニコする、その手伝いができるような気がした。


だから俺は必死で、亜季の応援をした。


そして、亜季の努力、俺の努力も少しは幸をなしたのか、亜季は友達が出来た。

居場所ができるようになって、亜季は学校でもニコニコするようになった。



そして、亜季は俺に言った。



『健太はあたしのヒーローだね』



あの日から、俺は亜季のヒーローでありたいと思った。

亜季が困ってる時、悩んでるときにそれに気づき、悲しいとき、寂しいときはそっと寄り添えられるように。

いつでも亜季の傍にいけるように。



そう、あの日から、俺は亜季のヒーローを目指していた。


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