チューリップの花束に愛を込めて
でも、その成果は感じられなくて。
亜季は強くて、芯があって、いつの間にか俺は亜季に頼るだけの間柄になってた。
そして、気がついた。
俺は、亜季のヒーローでなければ、亜季の理解者でもなく、“ただの幼馴染”なんだと。
亜季が言ったように、俺は亜季の“幼馴染”、亜季にとって俺も“ただの幼馴染”なんだと。
それが分かってから、俺は亜季を“幼馴染”として見るようになった。
ただくせになっていたから、亜季の辛いときや苦しいときの表情だけは見逃さなかったけど。
でも、それができても、結局のところ、“幼馴染”の域で終わることばかりだった。
そんな時に出会ったのが、由奈ちゃんだった。
由奈ちゃんを初めて見たとき、周りが可愛いとか言ってるとかじゃなくて、ただ純粋に、初めて亜季と出会った時のような懐かしさを彼女に感じたんだ。
彼女も苦しいときや辛い時にニコニコするようなところがあったから。
もしかしたら、亜季にできなかったこと、彼女にはしてあげれるかもしれない。
そう思ったこともあって、俺は彼女を知ろうと躍起になった。
その結果が、彼女からの、“付き合ってください”の言葉だったんだと思う。
亜季にしてあげれなかったこと、彼女にはしてあげたい。
亜季のヒーローにも理解者にもなれなかった俺だけど、それでも彼女のヒーローで、そして理解者になれるように。
そういう幸せがあった。
でも、それと同時に、ただの幼馴染の亜季は俺に笑わなくなった、距離を置き始め、そして離れていった。
なんで?
ただの幼馴染は、どちらかに恋人ができると離れなきゃいけないのか?
亜季に聞いても、亜季は困るばかりで、彼女に聞いても、彼女は泣いて怒るばかり。
けど、気付いた。
“幼馴染を辞めるね”、亜季がそう言ったとき。
あの時の亜季の笑い方は、出会った頃の亜季がよく見せていた笑い方で。
俺は、きっと、“幼馴染”なのに、亜季を苦しめてしまったんだと。