チューリップの花束に愛を込めて
放課後、健太の鞄を受け取り、健太の家に向かう。
インターホンを鳴らすと、健太のお母さんが顔を出した。
『あれ、亜季ちゃん一人?』
健太のお母さんは、あたしひとりだけなことに首を傾げた。
『…健太…くん、まだ帰ってきてないんですか?』
『…あ、あのバカ!
学校にいくフリしてバイトに行ったな…』
健太のお母さんは溜息をついて、そして困ったように笑った。
『…健太くん、バイト始めたんですか…?』
知らなかった、健太がバイトなんて始めてるとか…
『あの子、今、どうしてもお金が必要みたい。
どうしても欲しいものがあるみたいでね』
『……そう、なんですか…』
健太のお母さんは、続けて、あたしのことを困ったように、でも優しい目で見つめていた。
『…あの…』
あたしは、健太のお母さんの視線に気がついて、お母さんに声をかける。
『なんでもない。
亜季ちゃん、健太のこと、よろしくね』
健太のお母さんの言葉で、あたしは首を傾げた。
『あ、私、そろそろ買い物に行かなきゃ!!』
健太のお母さんの慌てように、あたしは一度お辞儀をしてから、自分の家に帰った。
自分の部屋について、制服から適当に私服に着替える。
さっきの健太のお母さんの言葉、どういう意味だろ…?
健太をよろしくって…
幼馴染として、仲良く、そう意味?
あたしはない頭を抱えて、何度も健太のお母さんの言葉の意味、健太が毎日花束を贈ってくる意味、そして由奈ちゃんと別れた理由を考えた。