チューリップの花束に愛を込めて




次の日、あたしの元にピンク色のチューリップの花束が届いた。


花束といっても、もうチューリップの時期じゃない、だからなのか生花ではなく造花のものだった。



『プリザーブドフラワーね、それ』

お母さんは届いた花束を見て、そう言った。



『プリザーブドフラワー?』



『生花と違って、枯れないお花っていうので最近有名なのよ?』



『……へぇー…』



あたしはその花束を見つめる。



『いいアイディアね。
 枯れないお花に、ピンク色のチューリップなんて』



お母さんはまるで自分がもらったかのように嬉しそうな顔をしていた。



『…ピンク……』




『ピンク色のチューリップの花言葉は“愛の芽生え”、“誠実な愛”』


お母さんはそう言って嬉しそうに微笑むけど、あたしは複雑な思いでいっぱいだった。



健太が由奈ちゃんに贈るならまだしも、あたしにピンクを贈るなんて…



あたしの気持ちに気づいていながら、この色は尚更贈らないはず。



そもそも、健太は花言葉なんて知らないよ。



だから、あの日、あたしの嘘をそのまま聞いていたんだから…




『今日はメッセージないの?』


お母さんに聞かれ、あたしは目をやる。


今日もまたチューリップ型の紙に短く文字が書かれている。





『愛の芽生え』


そう書かれていた。


思わず言葉にしてしまい、でも、口にしたことで、健太がピンクのチューリップの花言葉が“愛の芽生え”であるということを知っている…そんな疑問が浮上した。



健太、この花の、この色の花言葉、知ってるの…?


偶然なの?


それとも、何か意味があって花束を贈ってるの?




あたしは健太の花束に込めている意味を必死に考えようとした。









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