チューリップの花束に愛を込めて
そして、翌日。
あたしはいつどんな顔をして、健太がこの花束を贈ってるのか見たくて。
朝の早い時間から起きて、窓から見える外を眺めていた。
『…健太…』
まだこんな時間だというのに、健太は赤色のチューリップの花束を抱えて、お店の方に向かっていくのが見えた。
赤…
赤いチューリップの花言葉は“愛の告白”って…
まさか…。
健太がそんなことする訳ない…
だって、健太は由奈ちゃんのことが…
でも、健太は由奈ちゃんと別れた…
それで昨日はピンクのチューリップの花束で。
健太…?
『おばさん、これ、今日もよろしくお願いします』
健太は手に抱えていた花束をあたしのお母さんに手渡す。
『はい。
でも健太くん、大丈夫なの、体?』
お母さんは健太に問いかける。
体…?
『大丈夫です』
健太は笑って答えるけど。
何が大丈夫なの?
『健太くん、お年玉とか入ってからでいいんだよ?
何もわざわざバイトしてまで…』
バイト…?
お年玉…?
『ちゃんと自分の金で、亜季の花束は用意したいんです』
健太はそう言った。
ただ、真っ直ぐな目で。
ただ、透き通るような声で。
『…そっか…』
お母さんはそれだけ言い、健太は一度会釈をしてから家に帰っていった。
そして、お母さんはその足で階段を上ってきた。
『亜季ー入るよー』
まだ返事もしていないのに、お母さんは部屋に入ってくる。
『あら、もう起きてたの?』
何事もなかったように、お母さんはそう言って、あたしに花束を差し出す。
『……お母さん、健太のバイトって何…?』
あたしの質問に、お母さんはクスッと笑って、ベッドの端に腰掛けた。