チューリップの花束に愛を込めて



『この花束、健太くんが用意してくれてたのよ。
 健太くんがどうしても伝えたいことがあるからって』



……え……?



『健太くん、この花束を用意するのにバイトを始めてね。
 苦手な早起きも頑張ってたな、この一ヶ月の間』


一ヶ月……


この花束を用意…




『もうチューリップの時期ではないでしょ?
 でも、この花束を受け取って欲しい子はチューリップが好きだから、どうしてもチューリップにこだわりたいって、それでプリザーブドを提案したの』



『…受け取って欲しい子…?』




『赤色のチューリップの花言葉は、“愛の告白”』



あたしはお母さんの言葉の後に、いつものメッセージに目をやる。



そこには健太の字で、“小学校”と書かれていた。



小学校…




『亜季、ほら着替えて』


お母さんに言われ、あたしはよろよろと体を動かしながら、クローゼットの前に立つ。


お母さんは部屋を出ていき、あたしは一人の自分の部屋で着替えを始めた。





…健太…



何がなんなんだか分からないけど。




分からないけど。




もし、自惚れてもかまわないなら。




健太に聞きたいことがある。




健太に言いたいことがある。






健太、いい?



あたし、健太に聞きたいことがあるの!






あたしは急いで階段を降りて、家を飛び出していく。





健太、あたし、行くよ!









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