チューリップの花束に愛を込めて
たどり着いた、小学校。
普段なら関係者立ち入り禁止とか看板があるのに、今日はすでに誰かが入ったようで、既に扉があいていた。
あたしはそこを通り、校庭に出た。
でも、健太の姿はどこにも見えなくて。
あたしは一人歩き回る。
~♪~♪~♪~
突然、携帯が鳴り響いて、携帯を見るとメールが受信されていた。
メール…?
メールの送信者は健太。
【うしろ】
その短い言葉に、振り返ると、健太が立っていた。
『…健太…』
あたしが健太の名前を呼ぶと、健太は困ったように笑って、
『ちょっと歩こ』
そう言って、あたしの手をひいた。
健太は何を話すでも、何を聞くでもせず、ただ黙って、あたしの手をひいた。
着いたところは花壇。
『…ここ…』
あたしがそう言うと、健太は振り返って。
『多分、俺が亜季を好きになったとこ』
健太は静かに、そう言った。
『…え……?』
聞き間違いだと思った。
健太がそんなことをいうはずない…。
『俺、亜季が転校してきたとき、俺の前では笑えるのに、他のやつらの前だと上手く笑えない亜季のことをどうにかなじませてやりたくて、俺、頑張ったよ』
『亜季は花のことを通じて友達ができて、それで俺を“ヒーロー”だって言ってくれたじゃん?
俺、あれが嬉しかったんだ。
だから俺は亜季のヒーロー、ずっとヒーローでいる、そう俺思ってたんだ』
『でも、俺、亜季を助けるヒーローじゃなくて、亜季のたった一人のヒーローになりたかったんだよな…きっと。』
あたしのたった一人のヒーロー…?
『亜季、俺、亜季が幼馴染を辞めるって言って、それで俺から離れたとき…
俺、分かったんだよ。
好きとか、付き合ってとか、ずっと一緒とか…そんな言葉を言わなくても、てか確認しなくても、俺の生活には亜季がいて当たり前だったんだよな…』
『……健太……』
『亜季と離れたことなかったから、そんな当たり前のことに気付けなくて、だから自分の気持ちにも気付けなかったのかもしれない』
『亜季、俺、お前のことが好きだよ』
『……………』
健太の言葉に溢れる涙のせいで、視界が滲んでいく。
滲む健太の姿に、それでもあたしは必死で健太を見つめた。
『…ごめん。
色々気付かなくて…。
でも、今度は亜季のこと、一番に理解してやれるヒーローになるから…
そう約束するから。
だから、俺と幼馴染じゃなくて、恋人になってくれませんか?』
今、健太からすごい嬉しい言葉を言われてるのに。
あたしは呼吸することさえ出来ないくらいに涙が止まらなくて…
だから、何度も首を縦に振った。