チューリップの花束に愛を込めて
あたし達は、あの子と友達の後ろを少し離れて歩き、学校まで向かった。
『そういえばさ、駅の近くのカラオケにランネットの新曲が入ったんだって!
ねぇ、健太行こうよー』
ランネットは今や中高生に大人気のバンドで、あたしも健太もハマってる。
健太はランネットという名に目を輝かせた。
『マジ!?行く行く!!』
そう言って笑う健太は、小学生の頃となんら変わってない。
体が変わったっていうだけで、中身は変わってないのに、どうして恋をしてしまうと変わって見えてしまうんだろう…。
『あたし、先に歌うからねー』
『いや、俺でしょ』
でも、深く考えない。
考えても、考えても、健太はあたしを幼馴染以上に思わないだろうし、健太があの子のことを諦めるわけでもない。
それなら、健太とこんな風に笑い合える時間を大切にしたい。
でも、これは健太がまだ片想い、だから、そう思えるのかな…?
もし…健太が両想いになったら、その時は何か変わってしまうのかな?
『ねぇ…もし健太に彼女が出来たらさ…
こんな風にカラオケとかって…行けなくなるのかな…?』
『…へ、なんで?』
『なんでって…それは彼女と過ごす時間の方が大切になるからじゃない…?』
あたしの問いかけに、健太は真顔になる。
『彼女と過ごす時間も大切だけど、亜季とこうやってバカやってる時間も好きだからなぁ…』
健太はその顔のままで、そう言った。
ねぇ…健太。
それって、本当?
バカなあたしは、健太のその言葉、本気で信じちゃうよ?
嬉しく、嬉しくて、心の奥がじんわりと温かくなる。
あたしをこんな風にできるのは、健太だけだよ。
『そっか、じゃ、ランネットの新曲出たときは健太と歌えるね。
健太くらいしかランネットの良さを共有できるひといないから』
『お前、友達作れよ』
『いるよ、でも健太と歌うの好きだからだよ』
こんな風に、健太に“好き”って言えたらなぁ…
でも、健太の心にはあの子しかいない、だから健太を困らせちゃうもんね…。
健太が幼馴染で良かったけど、でも幼馴染を維持するのって大変だなぁ。
でも、健太と一緒にいたいから、頑張って幼馴染しなきゃ、だよね。