優しい狼。
そのあとは自分より直哉の方が説明がうまいからと直哉君とバトンタッチし、もう少し詳しく焔虎について教えてもらった。焔虎の他にもこの辺りにはいくつかの焔虎と比べると規模は小さいが暴走族が存在しているらしい。私が今日襲われたのは先日焔虎とトラブルがあった族のメンバーらしい。今後こういうことが増えてくる恐れがあると直哉君は言った。
「やっぱり暴走族なんかやってると人から恨まれることなんてしょっちゅうなんだよ。それは俺たちのも例外じゃないし、ましてや総長だとなおさらね。正々堂々と挑んでくる奴らはいいんだけど、卑怯な奴らは相手の大事なもんをめちゃくちゃにしてやろうって考える奴もいるんだよね。」
いっしょに話を聞いていた龍樹君が口を開く。
「今まではなんとか俺に彼女がいることは隠せてきたんだけどやっぱりどこからか漏れていたんだ。おそらくこれをかわきりにさっきみたいな奴が増えてくると思う。」
さっきのことが不意に頭をかすめ、繋いでいた龍樹君の手を思わず強く握ってしまう。すると龍樹君は小刻みに震える私の手を優しく握り返してくれた。
「でも大丈夫だ!俺が結に指一本として触れさせない!そんな奴、俺がぶっ飛ばしてやる!」
龍樹君の瞳は真剣で、龍樹君なら私をどんなことからも守ってくれると思った。
「龍樹だけじゃない。俺ら幹部も結ちゃんのこと、全力で守るよ。」
そこにいる幹部のみんな。直哉君以外はほぼ初対面なのに同じように真剣な顔で力強く頷く。
「今後、結ちゃんには龍樹がずっとついとけるようにする。どうしても無理な時は俺ら幹部とか下にいる他のメンバーをつける。護衛みたいなもんだけど結ちゃんの行動は制限されることが増えると思う。」
直哉君の言うことは最もだし私が我慢すれば龍樹君達に迷惑がかかることもないし、なにより安全なんだと納得した。



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