蕾の妖精たち
第三章 焦点
翌日の朝、早速、翠川は学長に呼び出された。
学長室に入ると、学長の椅子に玉井清三氏、その隣に理事長の杉山加奈子氏の二人が待ち構えていた。
「翠川先生、これが何か解りますか」
膨らんだお腹を弛ませた玉井が、机に差し出したのは、出金明細だった。
「五百万円です。貴方の軽率な行為に対する我が校の代償です」
青いスーツを着ていた杉山が、玉井を遮り、翠川に説明するように言った。
「どういう事ですか?」
「翠川先生、昨晩にあったことを、全てお話下さいませんか」
玉井が穏やかに、翠川に話を向ける。
「待って下さい。理由もなく個人的な詮索は、お答え出来かねます」
「個人的な詮索などでは、ないのですよ」
そこでまた、杉山が口を挟んだ。
「学長、私には時間がありませんの。早く進めて貰いたいですわ」
「分かりました、理事長。翠川先生、本校に今朝、一本の電話が入りましてね。その者が申すには、我が校の教師と生徒が関係を持っているというのですよ」
「……」
「翠川先生。昨夜、建築現場にいませんでしたか。相川幸乃と一緒に」
「学長、それは……」
「いたんですね? 翠川先生」
「ええ、しかし、それは……」
「暗い建築現場に、女生徒と男性教師が、いったい何をしていたというのですか。何もなかったと仰っても、世間では通用しませんよ」
「……」
「学長、もう結構です。分かりました。お金は用意しましょう。あとの処分を宜しくお願いします」
玉井は、立っている翠川を通りすぎ、学長室から出ていく杉山を見送った。
学長室に入ると、学長の椅子に玉井清三氏、その隣に理事長の杉山加奈子氏の二人が待ち構えていた。
「翠川先生、これが何か解りますか」
膨らんだお腹を弛ませた玉井が、机に差し出したのは、出金明細だった。
「五百万円です。貴方の軽率な行為に対する我が校の代償です」
青いスーツを着ていた杉山が、玉井を遮り、翠川に説明するように言った。
「どういう事ですか?」
「翠川先生、昨晩にあったことを、全てお話下さいませんか」
玉井が穏やかに、翠川に話を向ける。
「待って下さい。理由もなく個人的な詮索は、お答え出来かねます」
「個人的な詮索などでは、ないのですよ」
そこでまた、杉山が口を挟んだ。
「学長、私には時間がありませんの。早く進めて貰いたいですわ」
「分かりました、理事長。翠川先生、本校に今朝、一本の電話が入りましてね。その者が申すには、我が校の教師と生徒が関係を持っているというのですよ」
「……」
「翠川先生。昨夜、建築現場にいませんでしたか。相川幸乃と一緒に」
「学長、それは……」
「いたんですね? 翠川先生」
「ええ、しかし、それは……」
「暗い建築現場に、女生徒と男性教師が、いったい何をしていたというのですか。何もなかったと仰っても、世間では通用しませんよ」
「……」
「学長、もう結構です。分かりました。お金は用意しましょう。あとの処分を宜しくお願いします」
玉井は、立っている翠川を通りすぎ、学長室から出ていく杉山を見送った。