蕾の妖精たち
 翠川孝之は、自宅で一人、相川幸乃の手紙を読み返していた。

 全ての真実が、そこに記されていた。


 もう、キャンプ場へ到着した頃だろうか。

 学校から配布された、家族向けの連絡プリントには、管理人室の代表電話が掲載されていた。

 電話回線はこの1回線しかないため、緊急の場合のみ以外は遠慮するようにとの記載があった。


 去年の林間学校では、クラスを受け持っていなかった翠川も狩り出され、参加したのだが、たった1回線しかない貴重な電話が、家族からのたわいのない連絡で混雑し、結局使い物にならなかった記憶がある。


 翠川は、デスクトップ型のパーソナルコンピュータを起動させた。
 パソコンと略され、ひとつのステータスとして、急速に個人に普及し始めていたのだが、翠川は今の学校に移ってから金銭的に余裕が出ると、その将来性を考え、購入していた。


 相川幸乃の手紙には、アドレスが記されていた。

 翠川はインターネットに接続し、直接アドレスを打ち込む。

 少し間を開けて、翠川はエンターキーを押した。

 画面が切り替わる。


 掲示板だ。


 マウスをクリックする。
 画面をスクロールさせ、翠川はしきりに書き込まれた文字を追う。


 画面に映し出された文字を瞳に焼付け、翠川は掲示板を閉じ、パーソナルコンピュータの電源を落とした。


 床に寝転がって、そのまま泥にまみれるように、眠った。

 
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