蕾の妖精たち
第四章 終着点
 黄昏の毎日のようで、慌ただしい一日でもある。


 大惨事はマスコミに大きく報じられ、疲れきった関係者の中には、寝込んでしまう者が続出した。


 バス事故から、一週間が経とうとしていた。



 その頃、警察は新事実を掴んでいた。


 それは、ブレーキオイルが抜かれた形跡が、発見されたことである。

 この重大な事実を持って、事故ではなく、殺人事件となった。


 マスコミは騒ぎ立てた。


 その他にも、以下の事実が、警察やマスコミの手によって、判明していた。


 行方不明の生徒は、実は帰りのバスに乗っていなかったこと。

 その生徒の名は、相川幸乃であること。

 前担任、翠川孝之が事件直後に姿を消したこと。

 翠川孝之は、相川幸乃と親密な関係にあったこと。



 ◇



「えっ、そこへ行けばいいのね?」


 舞子は受話器を強く握った。


「今から急いで向っても、夕方になるわ。必ずそこに行くから、待っていて」


 榊舞子は、翠川孝之からの連絡を待ち続けていた。

 事件当日に入れた連絡を最後に、姿を消した翠川……。

 警察が何かを知っているのではと、疑い出すのも無理はなかった。


 その翠川が舞子に連絡を取ったのは、事件後ちょうど一週間を過ぎた朝であった。

 舞子は急いで、自宅の高級マンションを出た。

 翠川が指定してきた場所は、全ての始まり……、強姦事件のあった、あの丘の上だった。

 
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