蕾の妖精たち
◇
「捜査の為なんです。貴方がお読みになった後で結構です。中を拝見させては頂けませんか?」
富永と岡部と名乗った二人の刑事が、舞子の高級マンションを訪ねてきた。
定年前と若い刑事のコンビだろうか。
舞子には面識がない。
穏やかに舞子に諭す刑事に対して、若い刑事は部屋の装飾を頻りに眺めていた。
翠川の遺書は、両親宛でもなく、舞子に宛てられたものだった。
警察も開封が出来ず、舞子のところまで持ってきたのであった。
「一人で読ませて頂けませんか?」
「分かりました。私と岡部はマンションの廊下で待っています。読み終わりましたら、お声をお掛け下さい」
そう富永が言うと、背を向けていた岡部を促し、部屋の外に出ていった。
舞子は刑事たちが出て行ったことを確認すると、翠川の遺書と向き合った。
暫く眺めた後、封を切って中から便箋を取り出す。
便箋が二枚、白紙であった。