ダンデライオン
「よっぽど疲れているのね」

寝息を立てながら眠っている忍兄ちゃんに向かって、私は呟いた。

少年時代の面影が残っているその顔は、本当に今年で31歳になる男なのだろうか?

「反則にも程があるわ」

私は呟いた後、テレビのチャンネルを毎週見ているバラエティー番組に変えた。

だけど、私の視線はテレビよりも忍兄ちゃんの寝顔に行ってしまった。

「何で変わっていないのかしら…?」

思ったことを呟いた後、忍兄ちゃんに向かって手を伸ばしていた。

シミが1つもない白い肌に手が触れたと言うのに、忍兄ちゃんは目を覚まさなかった。

幼い頃に遊び半分で交わした約束は忘れていると思ったのに、忍兄ちゃんは今でもその約束を覚えていた。

「私は変わった方に入るのかしら?」

そう呟いて、忍兄ちゃんの肌に触れている手を離そうとした。
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