ダンデライオン
浴衣は赤地に桜柄、帯は白だ。

「なかなかキレイな浴衣だね」

珍しそうに浴衣を見ている忍兄ちゃんに、
「朔太郎が似合うからって選んでくれたの」

私は答えた。

「ああ、そう…」

忍兄ちゃんは呟くように返事をした。

「板前見習いが選んでくれた浴衣で、板前見習いと一緒に夏祭りか…。

よくやるよ、ホントに」

本人は私に聞こえないように呟いたかも知れないけど、
「丸聞こえよ、忍兄ちゃん」

私にはよーく聞こえていましたよ。

月に1回の耳掃除は今まで1度も欠かしたことがありません。

「忍兄ちゃんも行ってもいいけど、私と朔太郎から10キロ離れたところにいてちょうだいよ」

そう言った私に、
「10キロって、離れ過ぎにも程があるんじゃないか?」

忍兄ちゃんが情けない声で言い返した。
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