ダンデライオン
どうしよう、雷がだんだんと近づいてきてる…。

私は忍兄ちゃんの手を握った。

「息、してるよね…?」

握っている手には、体温がある。

脈のところに指を当てると、動いている。

雷が近づいていると言うこともあり、鳴っている音が大きい。

「早く止んで…」

忍兄ちゃんの手を強く握って、雨と雷が止むことを祈った。

私の頭の中に、あの時の出来事がよみがえる。

やめて…。

思い出したくないから、やめて…。

よみがえりそうになる出来事を消すように、忍兄ちゃんの手をさらに強く握った。

お願いだから、忍兄ちゃんを連れて行かないで…。

――死神は、雷に乗ってやってくる。
< 154 / 360 >

この作品をシェア

pagetop