ダンデライオン
バケツをひっくり返したようなどしゃ降りの雨が、私の躰を激しく打っていた。

「忍兄ちゃーん!」

その中で私は忍兄ちゃんの名前を叫んだ。

「忍兄ちゃーん!」

走りながら忍兄ちゃんの名前を叫ぶ。

「忍兄ちゃん、どこー!?」

服がびしょ濡れになって肌にくっつく。

スニーカーに雨水がしみ込んで、足を重くさせる。

「忍兄ちゃーん!

忍兄ちゃん、どこー!?」

私は忍兄ちゃんを探し続けた。

この雨の中で、忍兄ちゃんはどこにいるの?

私の声は聞こえる?

聞こえたら返事をして!

――ガツンッ…!
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