ダンデライオン
雷が鳴って、光った。

私は忍兄ちゃんの前に誰かがいることに気づいた。

よれたスーツに派手なシャツの男だった。

――この人は、誰なの…?

声を出したくても、出すことができない。

雷が鳴って、光った。

男の右手には鉄パイプがあった。

その鉄パイプの先には血がついていた。

――それで忍兄ちゃんに、何をしたの…?

「――ッ、アサちゃん…!」

その声に視線を向けると、忍兄ちゃんが私を見ていた。

「何だ、知り合いか」

男が呟くように言ったかと思ったら、私に視線を向けてきた。

鉄パイプを振りあげる。
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