ダンデライオン
「――あっ…」

声を出すことができない。

「――アサちゃん!」

――ガッ…!

気がつけば、私の視界に入ったのは真っ黒な雲だった。

そこから雨が激しく降っている。

ドサッ…!

背中に衝撃が襲った。

後頭部は忍兄ちゃんの手が回っていたおかげで、ケガをしなくて済んだ。

…忍兄ちゃん?

私は地面に横になった状態で、忍兄ちゃんが上になって私の躰をおおっていた。

「それで彼女を守ったつもりか?」

「――うっ…!」

忍兄ちゃんの背中に鉄パイプが振り下ろされた。
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