ダンデライオン
私に話をするって、今から朔太郎は何の話をするって言うの?

ドクドクと、私の心臓が嫌な音を立てて鳴り始めた。

まさか、婚約を破棄するとかって言わないよね…?

でも、たとえ朔太郎に何を言われても年上らしく大きく構えていないといけない。

私はそう言い聞かせた。

「座ってくれるかな?」

朔太郎に言われ、私はカウンターの指定席に腰を下ろした。

その隣に朔太郎が腰を下ろした。

「さっきの人なんだけどね」

「うん」

朔太郎が話を切り出してきた。

「女将さんなんだ」

「…えっ?」

お、女将さん?

朔太郎の口から出てきたその単語に、私は驚いて目を丸くすることしかできなかった。
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