ダンデライオン
「えっ?」

聞き返した私を忍兄ちゃんは見つめると、
「アサちゃん、何かあった?」
と、聞いてきた。

「別に、何にもないけど…」

私は首を横に振って答えると、アイスをかじった。

「板前見習いから何か話が聞けた?」

そう言った忍兄ちゃんに、私の心臓がドキッと跳ねあがった。

「聞いたよ」

私は答えた。

ドキドキと脈打っている心臓が忍兄ちゃんに聞こえませんように…。

「女将さんだったんだって」

私は忍兄ちゃんに言った。

「女将さん?

ああ、なるほどね」

忍兄ちゃんは納得したと言うように首を縦に振ってうなずいた後、なすの浅漬けを口に入れた。
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