ダンデライオン
俺はどうすればいいのだろう…。

そう思った時、カラカラと引き戸が開いた音が聞こえた。

「すみません、本日は閉店で…」

その顔を見た俺は、言葉を失った。

「どうも」

彼は一言言った後、後ろ手で引き戸を閉めた。

「あの…」

「いや、今日は客として来店した訳じゃないんだ」

言いかけた俺の言葉をさえぎるように、彼――浅井忍さんが言った。

彼は、麻子の幼なじみだ。

職業はホテルマンだ。

仕事の帰りなのか、浅井さんはスーツ姿だった。
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