ダンデライオン
「どうかした?」

俺の視線に気づいたと言うように、浅井さんがこちらに顔を向けてきた。

「い、いえ…」

俺は首を横に振って答えた。

仕方ないよな。

俺の髪型が黒髪短髪なのは、板前としての基本と衛生面からなんだから。

おしゃれとは無縁な自分に、俺は浅井さんに気づかれないように息を吐いた。

「昨日」

浅井さんが話を切り出してきた。

ああ、やっぱり麻子絡みなんだ…。

そう思った俺に、
「昨日、アサちゃんとケンカしたの?」

浅井さんが質問してきた。

「け、ケンカですか?」

話の登場人物は麻子だけど、内容に驚いて俺は聞き返した。
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