ダンデライオン
いきなりの昔話に戸惑うのが当たり前なはずなのに、浅井さんは興味があると言うように耳を傾けてきた。

「どうしても板前の夢をかなえたくて、専門学校への進学を期に家を飛び出しました。

それ以来家には1度も帰っていないんです。

実家の近状は3つ下の妹からの連絡を通じて知っているって言う感じです。

父親と絶縁状態な俺が言うのもおかしいとは思うんですけど、麻子には俺と同じ思いをして欲しくないって思っているんです。

麻子には、自分の父親を大切にして欲しいと思っているんです」

「そうなんだ」

浅井さんはそう返しただけだった。

「君の気持ちはよくわかるよ。

俺も親父が生きている間は、いっぱい迷惑をかけたから」

浅井さんは寂しそうに言った。
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