ダンデライオン
「浅井さんのお父さんは、どんな人だったんですか?」

俺は浅井さんに質問した。

「家族を愛している、まじめなホテルマンってところかな」

浅井さんが答えた。

「浅井さんのお父さんもホテルマンだったんですか?」

そう聞き返した俺に、
「俺が親父と同じホテルマンになったのは、せめてもの償いと親孝行ってところかな」

浅井さんが寂しそうに笑いながら答えた。

「だけどもし俺が君と同じ立場になったとするなら、俺はアサちゃんを選ぶよ」

浅井さんが言った。

「えっ…?」

麻子を選ぶって、浅井さん…?

戸惑っている俺に、
「アサちゃんがいない世界は考えられないんだ。

子供の頃からずっと、俺の隣にはアサちゃんがいたから」
と、浅井さんが言った。
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