ダンデライオン

「子供の頃からずっと、アサちゃんことが好きだった。

それは今もずっと変わらないこと。

だけど、失恋を利用してアサちゃんを振り向かせると言うそんなマネだけはしたくない」

そう言っている忍兄ちゃんはとても真剣で、どうすればいいのかわからなかった。

「忍兄ちゃん、待って…」

「麻子」

その呼び方に、私の心臓がドキッ…と鳴った。

私を名前で呼んだ男の人はお父さんと朔太郎を含める今までの彼氏だけだった。

自分の名前のはずなのに、忍兄ちゃんが呼ぶとそれは別の言葉のように聞こえた。

“麻子”と名前で呼ばれたのは、今日が初めてではないかと思う。

でも、どうして？

どうして今、私の名前を“麻子”って呼んだの？