ダンデライオン
高校生の時にお母さんを病気で亡くして以来、八束家の家事全般は私の担当だったのだ。

「居候の身なんだから、そのくらいのことはさせてよ」

忍兄ちゃんは笑いながら言った。

「今日は時間がなかったから、洋食の朝ご飯で申し訳ないけど」

いやいや、充分です。

と言うか、
「忍兄ちゃん、料理できるんだ…」

私は呟いた。

私の記憶違いでなければ、忍兄ちゃんは料理が苦手だったはずだ。

「1人で暮らしていたんだから家事全般得意になるよ」

私の呟きが聞こえていたと言うように、忍兄ちゃんが答えた。

「朝ご飯冷めちゃうよ?」

忍兄ちゃんに言われ、私は椅子に腰を下ろした。
< 28 / 360 >

この作品をシェア

pagetop