ダンデライオン
そう言ったおばさんに、
「――えっ…?」

忍兄ちゃんがかすれた声を出して聞き返した。

「お父さんは、あなたのことを心配してた…。

忍が襲われた時、お父さんはあなたの手を握って、泣きながらあなたの名前を何度も叫んでた…。

お医者さんに“私はどうなってもいいから忍を助けてくれ!”って、叫んでた…」

忍兄ちゃんの目から涙が頬を伝ってこぼれ落ちた。

「あなたが突然荒れてしまった時だって、お父さんは泣いて私に何度も言ったのよ…。

“忍に代われるものなら代わってあげたい、それができないなら俺の人生を忍にあげたい”って…」

「うわあああああああっ!」

床に顔をこすりつけるように、忍兄ちゃんは大声をあげて泣いた。

こんな姿の忍兄ちゃんを見るのは初めてだった。
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