ダンデライオン
シールを貼っていない売れ残りの花はお昼を過ぎたら貼るとしよう。

そう思いながらシャッターを開けると、
「おはよう」

声をかけてきたのは、『星野酒店』の星野澤登(ホシノサワト)さんだった。

「おはよう、さくらちゃんのところへ行ってきたの?」

私は星野さんに聞いた。

さくらちゃんとは、この横町でバーを経営している店主の名前だ。

「うん、ビールを1ダースと日本酒1本を頼まれちゃってさ」

星野さんが笑いながら言った。

「朝からお疲れ様ね」

そう言った私に、
「おっ、百合が半額かい?」

星野さんが半額のシールが貼ってある百合を指差した。

「昨日の売れ残りだから半額にしたのよ」

そう言った私に、星野さんはポケットから財布を出した。
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