ダンデライオン
「何回かそう言うつきあいがあって、朔太郎の方から結婚を前提に正式に俺とつきあってくださいって…」

「それで板前見習いとつきあい始めたんだ」

毒づくように言った忍兄ちゃんに、
「忍兄ちゃん、“南田朔太郎”って言う名前があるんだから彼をそんな風に呼ぶのはやめて」

私は言い返した。

「でも板前と呼ばれるような立場じゃないんでしょ?」

そう言った忍兄ちゃんに、
「そりゃ、揚場は下から2番目の立場だけど」

まるで言い訳してるみたいだと、私は思った。

「へえ、知ってるんだ」

「知ってるって、『味いちもんめ』を読んだ程度だけど…」

朔太郎が板前を目指していると言うことを知った時、ブックオフで『味いちもんめ』を大人買いして1週間かけて全巻を読んだのだ。

ドラマも再放送でやっていたヤツだったけど全部見た。
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