ダンデライオン
「板前と言われるのは煮方(煮物を作る人)から上と言うことも知ってるんだから」

そう言った私に、
「勉強したんだね」

忍兄ちゃんが言った。

「当たり前じゃない」

私は朔太郎の彼女で婚約者だ。

彼氏の仕事を理解するのが、彼女としての役目だと私は思っている。

「えらいね」

忍兄ちゃんがそう言って笑った。

私の頭に向かって手を伸ばしてきたと思ったら、頭をポンポンとなでられた。

「えっ、なっ…!?」

忍兄ちゃんに頭をなでられるのは子供の頃からのことだ。

例えばテストで100点をとった時とか逆あがりができた時、忍兄ちゃんはさっきみたいに「えらいね」と言って私の頭をポンポンとなでてきた。

子供の頃からのことなのに、何で私の心臓はドキドキと鳴っているの?
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