ダンデライオン
ああ、そうだ。

忍兄ちゃんに頭をなでられるのが久しぶりだからかも知れない。

久しぶりだから私の心臓はドキドキと鳴っているうえに、戸惑っているんだ。

「と言う訳で」

私は頭をなでている忍兄ちゃんの手を払った。

忍兄ちゃんが不思議そうに私を見つめる。

「私は朔太郎と結婚を前提につきあっているの。

どうして忍兄ちゃんが子供の頃の約束を真に受けちゃったのかどうかはわからないけど、私と結婚することを考えているんだったら早くあきらめて欲しいの」

私は忍兄ちゃんに言った。

「結婚を前提につきあっているって、いつ板前見習いと結婚する予定なの？」

…私、さっき朔太郎のことをそんな風に呼ばないでって言ったよね？

「朔太郎が板前、煮方になったら…」

心の中で毒づきながら、私は忍兄ちゃんの質問に答えた。
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