ダンデライオン
 * * *

26年前の4月2日、花屋『たんぽぽ』に1人のかわいい女の子が誕生した。

それから1週間後、俺は母親に連れられ、八束家を訪れた。

「いらっしゃい」

おばさんは俺たち母子を迎えてくれた。

「出産おめでとう」

母親はおばさんに紙袋を渡した。

「まあ、どうもありがとう」

おばさんは嬉しそうに笑いながら母親の手から紙袋を受け取った。

おばさんに案内されるように入った家の中には、ベビーベッドがあった。

「この子よ」

そう言ってベビーベッドを見せたおばさんに、
「まあ、かわいい!」

母親は少女のように両手をあわせた。
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