ダンデライオン
俺はベビーベットの中を覗き込んだ。

そこには、赤ちゃんが眠っていた。

サルじゃないかと、赤ちゃんの顔を見た俺は心の中で呟いた。

今アサちゃんにこんなことを言ったら怒られるけど、赤ちゃんの頃の彼女は顔は真っ赤なうえにクシャクシャで本当にサルのようだった。

「この子の名前はもう決まったの?」

母親がおばさんに聞いた。

おばさんは微笑むと、
「“麻子”よ」
と、言った。

「――アサコ?」

俺はおばさんに聞き返した。

おばさんが決めた名前に、この赤ちゃんは女の子なのかと俺はそんなことを思った。

今はどうなのかはわからないけど、“子のつく名前=女の子”と言う概念が俺の中であった。

「キレイな名前ね」

母親がうっとりしたように言った。
< 86 / 360 >

この作品をシェア

pagetop