ダンデライオン
「植物のほとんどは曲がりくねって育ってしまうけど、“麻”と言う植物はまっすぐにたくましく伸びる植物なの。

この子もまっすぐに、強くたくましく育ってくれますようにと言う意味で“麻子”と名づけたの」

おばさんが言った。

「へえ…」

よくわからないけど、俺は言った。

と言うよりも“麻”と言う植物があること自体、知らなかった。

俺はすやすやと眠る女の子の顔をもう1度見つめた。

「アサちゃん」

名前を呼んだ俺に女の子は気づいていないと言うように眠っている。

この当時は舌足らずで、スムーズに“麻子”と呼ぶことができなかった。

俺の中では“八束麻子=アサちゃん”が定着してしまっていた。
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