ダンデライオン
「えーっと、雨傘さんだっけ?」

「はっ?」

あっ、間違えた。

「あっ、雨ガエルさん?」

彼女は何を言っているんだと言う顔で俺を見つめた。

あっ、思い出した!

「雨宮さんか!」

俺はポンと手をたたいた後、彼女を指差した。

「…どんな間違え方をしているんですか?」

俺に指を差された彼女は呆れたと言うように呟いた。

それからつけくわえるように、
「と言うか、ノゾミでいいです。

皆さん、“ノゾミちゃん”って呼んでいるので」

彼女が言った。

そうだ、彼女の名前は雨宮希望(アメミヤノゾミ)ちゃんだ。

「じゃあ、ノゾミちゃん」

俺は彼女――ノゾミちゃんの名前を呼んだ。
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