ダンデライオン
「おおっ、わわっ…!?」

突然抱きついてきたから危うく転ぶところだった。

頭の高い位置で2つの三つ編みにしたアサちゃんの髪の毛が俺の目の前で揺れた。

今思うと、この当時のアサちゃんは俺に“好き”とか“大好き”とかってよく言っていたなあ…。

その言葉の意味がわかっていなくても、俺は嬉しかったよ…。


4月2日――今日はアサちゃんの5歳の誕生日である。

「アサちゃん、喜んでくれるといいなあ」

花屋『たんぽぽ』の前に立っている俺は半ズボンのポケットの中に手を入れると、かわいいクマのイラストが描かれている小さな紙袋を取り出した。

前日に母親と一緒に選んだ、アサちゃんへの誕生日プレゼントである。

俺が選んだプレゼントをアサちゃんは受け取ってくれるだろうか?

俺は大きく深呼吸をすると、店内に足を踏み入れた。
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