狼×4+私=架空世界
マシューのいつもの言葉からは想像もつかないほどどす黒い言葉が紡がれた。


「マシュ~…」


ハヤテが目を潤ませて、マシューの名を呼ぶ。

マシューはハヤテには反応しなかった。

その声が届いているのか届いていないのかは分からない。

ハヤテの白い頬を透き通った涙が伝う。


バリバリっと後ろで音がした。

皆一斉にその方向を見ると、壁が迫ってきている。

頭を竦めると頭上を突風と共に壁が飛んで行く。

壁が通り過ぎてもなお、風は吹き込んでくる。

踏ん張っていないと飛ばされそうなくらい強く、

目も開けられない。


「ハヤテ…?」


ハヤテの目が緑色に染まっている。

心を読んでるにしては、いつもと何かが違う…

そこまで見て私は目を瞑った。

目に風が当たってすぐに目が乾いてしまう。

恐ろしく強く吹き付ける風に誰もが目を瞑った。

もう一度目を開けるとマシューの橙色の目が色褪せたように見えた。

次の瞬間、視界の端に映っていた男の姿が消えた。

風も止む。

足が持ちあがらない。

嫌な予感がして足元を見ると、白い塊が私の足を覆っていた。


「キャ――――――!!虫―――――!!」


しかも最悪なことに塊は無数の蜘蛛がうごめいていた。

恐怖のあまり足をばたつかせるが粘り気が強まるばかりであった。

心が毛に逆毛を立てたようにざらざらと揺れる。

蜘蛛が足を伝って体に上ってくる。

見回すと他4人も足を固定され動けない状態だ。

かさかさかさかさかさかさかさかさかさ。

音を立ててわらわらと蜘蛛が這いあがってくる。


「嫌――――――――――――――――――――――――!!」


混乱のあまり涙を流して叫んだ。

< 21 / 76 >

この作品をシェア

pagetop