狼×4+私=架空世界
それから数日経った、ある日。

私はいつも通り、砂糖とミルク入りのコーヒーを飲んでいた。

ハヤテはブラックコーヒーをのんびりした表情で啜っている。

昨日味覚が幼稚だのなんだのとハヤテに馬鹿にされてから、一回ブラックで飲んではみたけど、見事に完敗。

苦すぎて諦めた。

マシューはハーブティー。

優雅に飲む姿も様になっているから余計腹立つ。

可哀想に…とでも言いたげな視線を送ってくるマシューはあえてスルー。

フウトとセシルはオレンジジュース。

なんで私だけあんなに言われるんだろう…


熱いコーヒーを無理矢理喉に流し込むと、私は席を立った。

自分の部屋に足早に向かう。

部屋に入ったら、扉に鍵を掛ける。

力が抜けてその場にへなへなと座り込んだ。

最近、胸の動悸が激しい。

心臓を掴まれたように、鼓動を感じ、棟がつっかえる。

息が苦しい。

病気…なのかな。


「ユイ!!チョコ、食う?」


扉の向こうからセシルの声が聞こえてくる。

無視すると、セシルはドアノブを回したようだった。

しかし、鍵を閉めているせいで、ガチャガチャと音を立てるだけだった。

仕方なく鍵を開けて、少しだけ顔を出す。

セシルの手にはチョコが乗っていた。

私はそれを受取ろうと手を伸ばす。


「おじゃましま~す!!」

「うわッ!!ちょっと、何!?」


次の瞬間、セシルは私の部屋に侵入していた。


「何かあったの?」


セシルにそう聞かれて、その能天気ぶりが何だか、すごくイラついて


「何もナイデス~。お気遣いどうもアリガトウゴザイマ~ス。」

「ちょっ、ちょいちょい!!」


適当に返事を済ませた。

コイツ…

私のお気に入りのぬいぐるみの上にどっかりと腰を下ろしやがって。

覚えてろ…

私から静かな怒りを買っているとも知らず、セシルは上から目線な口調で私に言った。


「さあ、俺に話すがよい!!」


えっへん俺すごいこと言ったろ、とでも言いたげな顔。

不愉快極まりない。

こんな奴に誰が言うかッ!!


「何もない。Go away.」

「マシューじゃないんだから英語やめて!!」


単にセシルが単細胞なだけだろ…

なんて言ったらセシルが凹みそうだからやめておく。

黙秘を決め込んだ私はベッドにうつぶせに倒れた。


「ねぇねぇねぇ、何かあったんでしょ?恋とかさ!!」

「知らない。」


何で、恋に限定するんだか。

確かに紅一点、逆ハー状態だけど。

そもそも、恋なんてしたことないし。

どういうものなんだろー…


「セシル。」

「ん?」

「恋ってどんな感覚?」
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