狼×4+私=架空世界
「光があれば、影がでる。

アホは健在だな。」


その影を見た私が思わず退歩すると、女はすっと姿を見せた。

金髪が揺れ輝く。

悔しそうに顔を歪め、女は憎らしげにフウトを睨みつけた。

美人の激怒の表情ほど怖いものはない。

それは威圧感さえも与えるものであった。


「邪魔すんな。」


威嚇と言える表情を見せ、女はまたフッと姿を消した。

光りに照らされた女の影は、ゆっくりとフウトへ近づいて行く。

この時に、その光源がフウトなのだと分かった。

そうだ、フウトは感情が高ぶれば光も出現する。

皆、この後の展開が読めず固唾を吞んで見守った。

そんな時、ドサッと何かが落ちる音がした。

音の主は女。

その場に座り込んでいた。

周囲を不安げに見回しながら手を虚空に彷徨わせる。

まるで目が見えていないみたいに。

フウトの目の色が金に近い黄色に光っていた。

親子だけあって、目つきはとても似ている。

フウトの二つ目は真っすぐに女を睨んでいた。


フウトの能力は五感を使えなくする能力…

神様がそう言っていた。

フウトは今まさに、女の視覚を奪っている。


「見ちゃダメw」


マシューの手が私の目を覆い隠す。

瞬きをするとマシューの手にまつ毛が当たった。

その後、耳をつんざく悲鳴も聞こえたが、すぐさま止んだ。

まるで動画のStopボタンを押したように、音は消えた。

マシューが能力を使ったんだろう。

そして手を外され、真っ先に視界に入ったのは金髪が地面にうつぶせで倒れている姿だった。

髪を振り乱して、目をひん剥き、獣の姿で死んでいた。

出血こそしていないものの、かなりグロテスクな光景である。

胸の辺りがムカムカした。
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