狼×4+私=架空世界
「人でごった返してやがるな。」

「ま、こんなもんだろww

前行った時もこんな感じだったじゃんww」

「まぁな。」

「はいっ!!質問!!」


と私が手を挙げて言うと


「出た、キチガイww」

「おいこら」


マシューがすかさず私の神経を逆なでする。


「で、どうしたんだよ。」

「前にもここに来たってことはさ、家近いの?」

「家っつか、住処かな。

たまにここに買いに来てた。」


住処って、動物じゃないんだから…

フウトの言いたいことは多分分かる。

家らしい家には住んでなかったってことだろう。

もういい加減踏み込んでいいのかもしれないけれど、自分のこともろくに話せていないのに、他人のことに突っ込んじゃいけない気がする。

実際4人は、全くまとまっていないようでしっかり団結している。

きっと私は5人として見られているんじゃなくて4人+私という見られ方をしてる。


仕方ないことは分かってる。

これがどうにも出来ない事だとも。


でも、ちょっと寂しい。


いつ頃からだろうか、私は4人に憚れているような被害妄想に陥っていた。

仲が良すぎるのを嫉妬しているとか、そういうありきたりな感情ではない。

ガラスの破片のようなもの。

それが胸にやんわりと突き刺さっている感覚。

普通に生活してたら、気づくまで分からないような、そんな痛み。


それが悲しくて、一度だけ、涙を流した。

声を必死に押し殺して。

蛙の大合唱が印象的な夜だった。

息が出来なくなる程に自分で自分の首を掴んだ。

深く爪を立てて食い込むように。

何故そんなことをしたのか、実を言うとあまり覚えていない。

不意に悲しくなったとしか言いようがない。

一言添えるなら、誰にも気づかれなくてよかった。

それくらいのことであった。
< 42 / 76 >

この作品をシェア

pagetop