狼×4+私=架空世界
「不思議なことに、あの眼鏡の男性と童顔の男性。」

「…あぁ、秀と楓斗か。あれがどうした。」

「あの方々は血縁者を手にかけたんですよね?

今まで見てきた犯罪者は、人を殺すと気が動転してしまって塞ぎこんでしまう。

それにも関わらず、5人全員、正常でした。」


「……つまりなんだ?

人を殺し慣れてると?」

「いや、違います。

世奈様、『殺人博士』のお話はご存じで?」

「あぁ、知っているが。」

「わたくし、前、その方の研究所に鼠として潜入したのですが。

その時に見た、被検体が


弟さんの顔に似ているなぁ、と。」

「なんだと?見間違いではなかったのか?」

「はい。

何より、横のプレートに月島攻詞榴、と」

「じゃあ、あいつはもしやモルモットに…」


「…セシルという名前、英語の男性名かフランスの女性名です。

日本人にはあまり例がないですから。

それにあの当て字です。

以前、世奈様の履歴書をちらと見てしまったことがありまして。

その時に親族の欄に攻詞榴と書かれていたのを鮮明に覚えております。」


「お前にはお見通しという訳か。」

「先程のお言葉も、モニターによって監視されているから敢えて言ったのでしょう?」


「…あぁ。

全く、昔から生意気な言いっぷりとやる気だけはあった奴なんだ。


なぁ、頼みたいことがある。」


「えぇ、分かっております。


あの者らの身元ですね?承知いたしました。」

「あぁ、頼むよ。」


女重臣はすっと姿を消した。

まさに、神出鬼没な奴である。


「殺人博士を、ねぇ…」


世奈は、誰にも聞こえぬ声で小さく呟いた。
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