狼×4+私=架空世界
「ユイ?」

「…!!いつの間に」

「なんで泣いてるの?」


私の声を遮って聞いたのはハヤテだった。

ノックくらいしてよと言いたくなったけど、ノックしてもきっと今の私は部屋に誰もいれることはないだろうけど。

何も言えなくて、くまに顔を埋めた。

泣いてたのがバレたのが恥ずかしかったし弱いところなんて見られたくない。

ハヤテの気配が私に近づいた。

そうだ、ハヤテは思考を読むんだ。

でも、今は心を読み取られたくない。

頭にそっと手が置かれる。

不意にマシューの顔が頭をよぎり、びくっと体が動いた。


「怖い?俺のこと」

「ちがっ…」


全然怖くなんかないと首を横に振り続けた。

むしろ、安心してる。

あなたの優しさに。

ねぇ、私、あなたの優しさに救われてたんだよ?


でもそれを言葉にすることはない。

上げた顔が再び俯いた。

涙が一粒落ちた。

絨毯は既に濡れて染みをつくっていた。


「私じゃだめっかなっ…?」

「だめって?」


「仲間にっ入れてっ…ほしっ…ひっく」

「仲間じゃないの?」

「そういうことじゃなくてっ…」


自分でも意味分かんない。

ハヤテは仲間だと思ってる。

でも私が欲しいのは多分、それだけじゃない。


「私…消えたいよ…」

「ユイ…?」

「なんで、4人じゃなくて、5人にしたの?

私がいない方がいいじゃん…

私はみんなにとっていらないよ!!」


これが本音。

小さい頃から『自殺願望』があった。

このご時世、人に殺されることはあるけど、生き抜くことより自殺することの方が難しい。

いつも憚られて。

その度に、何で自分は生きてるんだろうって思った。

両親に話しかけたら嫌な顔されて。

『お前なんていなければいいのに』って。

『じゃあなんで私を殺さなかったの?』って聞きたかった。


死はいつも隣合わせ。


ここで首を吊ることも可能。

カッターで頸動脈を切ることも。

頭を固い岩に打ちつけることも。

それが出来ないのは、私がただの強がりで中身からっぽの人間だから。

もう心が折れそうなんだ、私。


「そんなことない。」

「皆偉そうに言うよ!!

でも全然そんなこと思ってない!!

ハヤテもどうせ、その場しのぎで言ってるんでしょ!?」

「俺はそんなこと言わない。」

「嘘つかないで!!」

「本当。信じて。俺のこと。

ユイにだけは絶対、嘘はつかない。」


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