夏のわすれもの
そう思いながら、俺は理解していた。

彼女も陣内に恋をしている。

理由はどうであれど、俺は理解をした。

陣内を見る目が違う――ただ、それだけの理由だった。

陣内もモテたものだなと、俺は心の中で呟いた。

周さんにも、目の前の彼女にも、陣内は思われている。

陣内が抱えているものに、何も気づかないで。


その日、俺は陣内に用事があったので社長室に足を向かわせていた。

社長室のドアの前に誰かがいる。

彼女だった。

青い顔をした彼女がドアの前に立っていた。

「周さん?」

歩み寄って声をかけると、彼女が俺の方へ振り返った。
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