夏のわすれもの
その人物は、目を伏せていた。

ハーフアップにしたその髪は、陣内のためだろうか?

そんなことを思いながら、俺は車を指定された場所に向かって走らせた。

「暑いなー」

寒いくらいに冷房がかかっていた車内がウソのようだ。

車を出たとたん、ギラギラの太陽が襲った。

干あがってくれたらどうしてくれよう?

そんなことを思いながら、車の中の荷物を下ろしに足を向かわせていた時だった。

「藤堂さんじゃないですか」

その声に振り返ると、彼女がいた。

柔らかそうな白いワンピースに顔の半分を隠しているコーヒー色の大きなサングラスがよく似合っていた。
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