嘘つきな背中に噛み痕をアゲル。
「本当に晴哉とは正反対よね。ほら、覚えてる? マラソン大会の学校新聞でさ、五年生の女子は私が一位で新聞に載ったじゃない?
んで、六年の不良がその新聞を破って遊んでてさ。びっくりして泣く私に、晴哉がその不良を注意してくれたんだけど、晴哉を突き飛ばしたのよね」
今の私なら、容赦なくその不良を殴っていたけれど、当時は一位になってほくほくしていた気分を粉々にされて、ショックの方が大き過ぎてポロポロ泣いてしまった。
「そしたら、あんたは問答無用でその六年生殴っちゃうんだもん。ぷぷぷぷぷ。馬乗りになって先生が来るまでずっと殴っちゃってさ。私が怒る暇もなかった」
「知らん。忘れた」
ばつが悪そうに背中を向ける幹太は、ちょっとだけ可愛い。きっと覚えてる。
見た目が怖いだけで、暴力なんて振るわないアンタがそんな暴挙に出たのは、後にも先にもあれだけだった。
「私は覚えてるよ。幹太は先生に怒られるのが嫌で勝手に帰っちゃうし。私は晴哉に手を握ってもらって保健室で放課後まで一緒にいたもん。晴哉がね、学校新聞をテープで繋げていくの。パズルみたいにバラバラに破られた新聞を丁寧に丁寧に。泣いている私に歌を歌ってくれたり、ティッシュを渡してくれたり」