嘘つきな背中に噛み痕をアゲル。
洗濯だって仕事だって、晴に離乳食を作るのだって、できる。
できるよ。
でも、あの日が染みついた行動はしたくない。
あの日に置いておきたいの。
邪魔をするならば、私はどんな手を使っても拒否してやるんだ。
「桔梗ちゃん、もういい加減眠りなさい」
晴を寝かせて、しばらくぼーっと縁側を見ていた。
とっくに義父も寝ていたし、これじゃ昼間にスムージーを飲んで目の腫れを気にしていた自分が馬鹿みたいだ。
「お義母さん、皆ね」
「なあに」
しょうがないわねと、肩にかけた羽織りものを寄せつつ、私の隣に座る。
空は、テカテカと星が輝いているし、桔梗の花がさわさわと揺れているのも見える。
こんな普遍的な風景は落ちつくのに。
私は目の前の環境が少しでも壊れてしまいそうだと、誰かの背中に隠れてしまう。
「皆、私がどれだけ晴哉を好きだったか全然分かってくれないの」
ぽろぽろと流れる。
落ちては膝に染み込んで行く涙が、安っぽく見えた。
言葉にしたら、その意味が溢れすぎていて、ペラペラの紙のように感じた。